【コラム】十一月霜月、ボジョレー・ヌーヴォーを待って

十一月は、旧暦で「霜月(しもつき)」という和風月名で呼ばれています。文字通り「霜の降る月」を意味し、晩秋から初冬にかけての季節を表します。旧暦の11月は、現在の太陽暦の11月下旬から12月上旬にあたることが多いですが、晩秋から初冬にかけての季節を表す、趣のある呼び名として現在も使われています。冬が始まり、厳しい寒さが訪れる時期を象徴しています。
霜月という月名の由来には諸説ありますが、最も一般的に言われているのは、この時期になると朝晩の冷え込みが厳しくなり、霜が降り始めることから「霜降り月(しもふりづき)」が転じて「霜月」になったという説です。その他には、食べ物を備蓄する月である「食物月(おしものづき)」が転じた。また、作物が枯れて終わりになる月である「末月(すえつき)」が転じたなどの説があります。 あなたにとって、霜月を思い浮かべる晩秋の色は、何色でしょうか?紅葉の燃えるような赤?それとも銀杏の黄金色?霜月にはシックな色が似あいます。ボルドー、ワインレッド等の深みのある赤は、華やかさと落ち着きを兼ね備えています。十一月、シックで魅力的な色と言えば、ボジョレー・ヌーヴォーのワイン色を思い出しませんか。

ボジョレー・ヌーヴォーは、フランスのブルゴーニュ地方の最南端に位置するボジョレー地区で造られた新酒だけが名乗ることができるワインです。毎年11月の第3木曜日に世界中で解禁されることが国際的に取り決められています。ボジョレー・ヌーヴォーは、黒ブドウ品種であるガメイ(Gamay)のみを使用して造られます。ガメイは、他の品種に比べて発芽や成熟が早く、解禁日までの短い期間で醸造・瓶詰めが可能な特性を持っています。また、フレッシュでフルーティーな香りと、タンニンが少なく軽快な飲み口が特徴で、新酒に最適な品種とされています。
ボジョレー・ヌーヴォーの起源は、1800年代頃にボジョレー地区の地元民が収穫を祝って飲んでいた手軽な日常ワインに遡ります。収穫したばかりのガメイ種のブドウから造られる、新鮮でフルーティーなワインは、地元で愛されていました。正式に「ボジョレー・ヌーヴォー」としてフランス政府に認められ、販売が始まったのは1951年。元々、ワインの販売は綿密なスケジュールで管理され、新酒をすぐに市場に出すことはでない決まりだったのです。しかし、ボジョレーのワイン生産者たちは、より早く新鮮なワインを届けたいと要求し、それが認められて「ボジョレー・ヌーヴォー」の販売が実現しました。

そして1970年代に、シェフのポール・ボキューズたちが提唱した「ヌーベル・キュイジーヌ(新しいフランス料理のスタイル)」の普及とともにボジョレー・ヌーヴォーも世界中に知られるようになり、今日では、世界で最も有名な新酒ワインの一つとなりました。
そんなボジョレー・ヌーヴォーを贈る時や、食卓を飾る際には、やはりボルドー系のダリアやチョコレートコスモス等が似合うでしょう。これらの花をボトルに添えたり、テーブルに飾ったりすると、より特別な雰囲気を演出できます。 ボジョレー・ヌーヴォーとボルドー色のダリアを組み合わせると、たしかに情熱的で少し大人の恋の物語が描けそうです。その物語では、ボジョレー・ヌーヴォーが持つ「その年に生まれたばかりのフレッシュさ」と、ボルドー色のダリアが象徴する「情熱」や「華やかさ」を組み合わせることで、まさに大人の恋の始まりを描くことができそうですが、その物語はまたいつか。
