【コラム】十月神無月・ハロウィンとマリーゴールドの花


日本の旧暦で、10 月は神無月(かんなづき)です。「神無月」と書く由来には諸説があって、もともとは収穫した五穀を神様に捧げて感謝のお祭りを行う季節ということから、「かむなづき=神の月」の意味から来ていると言われています。
それに、もうひとつ別の話もあります。それは文字どおり八百万(やおよろず)の神々が縁結びのために出雲大社に集まる月とされているため、他の土地では神様が不在になる月なので「神無月」で、出雲では神様が集まるので「神在月(かみありづき)」になっているという話です。
神様は、稲の収穫を終えた人々の報告を聞き、翌年の豊かな実りや人々の縁を結びます。
日本の十月は、神様にとってとても忙しい月なのです。(写真は出雲大社 神楽殿)
でも、神様の集合地が出雲と定まったのは何故かと調べたら、出雲大社の御祭神大国主命(おおくにぬしのみこと)が神話の中で、「目に見えない世界の統治」を任されたことが理由のようです。目に見えない人間の縁や運命を司るのが大国主命であり、そのお膝元の出雲で会議をするために全国から神様が集まる、というわけだそうです。

この十月の末には、西洋ではハロウィンがあります。ハロウィンは、古代ケルト民族の収穫祭(サウィン祭)が起源です。
ケルト人にとって11月1日は新年であり、その前夜である10月31日は、夏の終わりと冬の始まり、そして「死後の世界との扉が開く日」とされていました。
この節目の日には、先祖の霊が家族のもとに戻ってくると信じられていた一方で、悪霊や魔女も一緒に現れて、作物を荒らしたり、人間の魂を連れ去ったりするとも考えられていました。
ケルト人たちは、悪霊から身を守るために、焚き火をしたり、動物の皮や頭蓋骨を身につけて悪霊と同じ姿に扮したりすることで、人間だと悟られないように、あるいは悪霊を追い払おうとしました。
これが仮装の起源とされています。それが現代のハロウィンにつながっています。
そんなハロウィンを象徴する色には、かぼちゃや炎を思わせるオレンジ色があります。晩秋の景色の中でひときわ目立つ花がマリーゴールドで、オレンジ色の鮮やかな花を咲かせます。
マリーゴールドは、キク科の植物です。花言葉の一つに「悲しみ」があります。
この花言葉は、古代メキシコでは、マリーゴールドは死者の日の儀式に使用され、故人を偲ぶ花として重要な役割を果たしていて、死者の魂が戻ってくる道しるべになると考えられていました。この習慣が「悲しみ」という花言葉につながっています。

神無月、ハロウィン、マリーゴールド、一見、無関係に見えるこれら三つの事柄には、共通のテーマが隠されています。
それは、「見えない存在との交流」です。
出雲大社では、神々という目に見えない存在と人間が交流し、願いを託します。ハロウィンでは、死者の魂という見えない存在を迎え、悪霊を遠ざける儀式を行います。
マリーゴールドは、亡くなった家族の魂を迎え入れるための道しるべとなります。
異なる文化圏で生まれた行事や風習が、同じ時期に、目には見えない世界とのつながりを大切にしています。これは、季節の変わり目に、人々が自然と死生観や信仰に思いを馳せてきた、太古からの普遍的な心の動きなのかもしれません。
十月、「見えない存在との交流」が、「神の月」なのだと思います。