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【コラム】1月睦月 新しくもあり、懐かしくもあり

1月と言えば睦月。年初に親族や知人と仲睦まじくということからきたものですが、その重要な行事が、お正月です。お正月は、歳神様(としがみさま)をお迎えすることが主な目的の行事です。

歳神様は、幸福や実りをもたらす神様です。その年の豊作や家内安全、人々の健康と幸せをもたらしてくれる福の神として、お正月に門松や鏡餅を依り代(よりしろ)として家にお迎えします。一方で、歳神様は、単に豊作をもたらす神としてだけでなく、「歳」を重ねるごとに更新される生命力や再生、ご先祖様から子孫へと繋がる生命の循環といった、より根源的な側面を司る存在なのです。

 歳神様をお迎えするために正月飾りの準備をしますが、その前に大掃除(煤払い)をすることも大切な事です。一年の穢れを清め、神聖な場として年神様を迎え入れるための家と心の儀式です。それは、新しい年と歳神様を迎えるために、心身ともに清浄な状態にリセットする意味合いがあるのです。

1月。英語ではJanuary、フランス語ではjanvier、ドイツ語でJanuar。これらは全て、ローマ神話の門戸の神であるJanus(ヤヌス)を語源としています。1月の守護神ヤヌスは「扉(Janua)」の神であり、物事の始まりと終わり、そして過去と未来を見通すために、2つの顔を持つ姿で描かれてます。

ひとつの顔は後ろを、もうひとつの顔は前を向いていて、これは新年を迎える1月が、過ぎ去った年を振り返り、新たな年へと向かう時節であることを象徴しています。

古代ローマでヤヌスは大神であり、神々のなかでも最古、最貴、最高と信じられていました。これにより祈祷の際には、真っ先にヤヌスの名があげられたことからも、一年の始まりである1月の守護神とされたのです。ヤヌスは時の後先(あとさき)、全ての事柄の終わりと始まりを見守っており、ヤヌスによって一年の安泰がもたらされると信じられていたのです。

 ヤヌス大神の表裏は、入り口と出口、あるいは生と死など。二面性を考えると、光と影、陰と陽、善と悪、月と太陽、親と子、男と女、等が思いつきます。光は影があるからこそより輝きを増し、影は光があるから出来る、陰陽五行を思いださせもします。

 そんな区切りでもあり、新たを迎える時でもある1月。代表的な1月の花の一つに、スイセン(水仙)があります。スイセンは、神話としても有名で、学名(Narcissus)の由来にもなっている、ギリシャ神話の美少年ナルキッソス(Narcissus)の物語が有名です。

ナルキッソスは、非常に美しい青年でしたが、他者を愛することができず、多くの人々の求愛を拒んできました。その高慢さを、復讐の女神ネメシスによって罰せられます。彼は泉の水面に映る自分の姿に恋をして、そこから離れることができなくなり、ついには、水面に映る自分を見つめ続けたまま、その場で衰弱して死んでしまいました。ナルキッソスが命を落とした場所に咲いたのが、スイセンだったと言うのが神話の物語です。。スイセンの花が、水面を覗き込むようにうつむき加減に咲く様子が、ナルキッソスが泉に映る自分に見惚れていた姿に喩えられています。

この物語から、スイセンは自己愛やうぬぼれといった花言葉となりますが、同時にナルキッソスの清らかな美しさから、希望や神秘といったポジティブな花言葉もあります。また黄色いスイセンの花言葉には、「もう一度愛して欲しい」もあることを忘れないでください。

 去年今年 貫く棒の ごときもの   高浜虚子

よいお年をお花とともにお迎えください。

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